魔王「しゅ、趣味は読書とか、絵を描くことでその…、
魔王としての仕事はよくわかりませんけど…、あ、よ、よろしくお願いします」
……
幹部A「(は、おいおい、いくら先代の魔王がぽっくり逝ったからって…、魔界の田舎で暮らしてきた何も知らない孫娘を魔王にするってどうなんだよ…、どう考えても実力的に魔王は俺だろ…ムカつくわ)」
幹部B「(はっ、あんなガキが魔王?いつまで血統での世襲制を続けるのかしら?ムカつくからいじめてやろw、きゃはは)」
幹部C「(ふぉっふぉ、魔王様の孫、なかなか可愛いじゃあないですか…ふひっ)」ムラムラ
幹部D「……」
魔王「(どうしよう…、わたし、魔王なんか、おじいちゃんの跡なんか継ぎたく
なかったのに…、どうしてこんなことに…)」
魔王「(けどもうおじいちゃんの遺言でやるしかないし…、仕事も初めは幹部の人たちに
教えてもらいながらやれば、なんとかなる、よね…)」
数週間後………
幹部A「ええと。ここの魔物の配置、変更になったから今日中に指示の変更しといてくれます?」
魔王「え…、け、けど今日はもうこんな遅い時間だしその…」
幹部A「やろうよ。仮にも魔王なんだからさ」
魔王「は、はい…、けど、もっと早く言ってくれれば」
幹部A「え…?なにそれ、おれの指示が悪いってこと?はは、やっべー、おれ、
名ばかりで何もできない新人の魔王にだめだしされちゃったよ」
魔王「あ、い、いえ!そんなつもりじゃ、私ただ、」
幹部A「あのさあ!わかんねえことあったら自分から聞こうよっ!!ねえ!ガキじゃねえんだからさ!!」
魔王「ひっ…、す、すみませんでした…」
廊下
魔王「ひっ」ドンっ
幹部B「は、どこほっつき歩いてんのよ、ホントどんくさい子ね」
魔王「す、すいませっ、きゃあっ!つ、冷たっ…!」
幹部B「あら、ごめんなさい、飲み物こぼしちゃった…、けど魔王さまともあろうお方がこんなものも
さけられないだなんて、ね?おどろきだわ」
魔王「うう…ご、ごめんなさい…」
幹部B「きゃはは、こっちこそごめんなさいね、魔王様wきゃはは」
魔王の玉座
魔王「はあ…一人でいられる部屋が一番落ち着く…」
幹部C「ふぉふぉ、だいぶお疲れのようですな、魔王様」
魔王「え?あ、あなたは確か幹部の…」
幹部C「しかし皆さん、ひどいですなあ、まだ赴任したばかりの魔王様にあのような仕打ち…」
魔王「え、いや、そんなことは…ひぃっ」
幹部C「しかし、大丈夫ですよ、わたしは、あなたの味方ですから」なでなで
魔王「あ、あの、ちょ…、手、さ、触られると、あの…」
幹部C「おっと失礼…ふぉっふぉ…、けど何か困ったことがあったらいつでも頼ってください
私はあなたの味方ですから、ふひ」
魔王「」
見覚えあるな
再放送かこれ
数か月後
幹部A「魔王がいなくなっただと!?」
部下「え、ええ、魔王城を探してもどこにもいなくてっ」
幹部A「かーっ!なっさけねえガキだぜっ!やっぱ、魔王の器じゃなかったってことかなっ!」
幹部A「(なんてな、はは。あれだけシゴいたのに思ったより粘ったなあのガキ!けど
あの糞ガキさえいなくなれば、さすがに次の魔王は俺だろw)」
幹部B「(ふふ、ようやくあのしょんべん臭いガキがいなくなったか。けど、
ストレス解消の相手がいなくなってちょっと残念wふふ)」
幹部C「(ふぉっふぉ…、セクハラしがいのある魔王様がいなくなってちょっと
残念だわい、ふひひ)」
……
わかる
くさそう
人間界
魔王「はあ…はあ…もうだめ…耐えられない。幹部の人みんな怖いし…、いじめてくるし…
気遣うふりして体触ってくて気持ち悪いし…もうやだよぉ…ぐす、ぐす」
魔王「魔界でももう、魔王扱いで戻っても魔王城に連行されるし…、
とっさに人間界に逃げてきたけど…」
魔王「ここどこ…?なんか変な森の中に迷い込んじゃった……、人間界なんて初めてきて場所わかんないし…
ふぇええ…、わたし、どうしたら…ぐす…ぐす」
少女「ん?あれ、あなた…、、どうしたの、道にまよったの?大丈夫?」
魔王「え…?あなたは…」
……
魔王「人間の同世代の子と会うのは初めてだわ」
少女「そっか、頭にツノが生えてるからもしやと思ったけど、魔族なのね、
けどそれにしても立派なツノだけど…もしかして上級の魔族なの?」
魔王「うん…、あの、実はね、わたし、魔王なんだ。最近おじいちゃんの跡をついで…、
けど、誤解しないで。私別に人間を支配したりとか興味なくて…、
戦いとか仕事も全然だめで、魔王を継ぐのも嫌になって逃げてきちゃったくらいだし」
少女「そっか…、それじゃ、わたしと一緒だね」
魔王「え?」
少女「わたしも実は、お父さんが勇者やっててさ」
少女「お父さん、私に勇者を継いでほしいみたいなの。けど、わたし、そういうの
興味なくて」
魔王「へえ…」
少女「いつも剣や魔法の修行とか…、最後に魔王を打ち取った時のセリフとか練習させられて…
勇者としての役割を果たすことがお前の運命だからって…」
魔王「ああ、わかるわかる。わたしも小さいころおじいちゃんに魔力の修行とか、
魔王城に勇者が来たときとか倒されたときのセリフとか練習させられてさあ。それが運命とかなんとかいわれて」
少女「あーやっぱそっちもそんな感じなんだ。笑っちゃうよね。私なんて
部屋に引きこもって、読書とか小説書いたりするのが趣味のオタクなのに」
魔王「え、そうなの?あ、あのっ、わたしも実は、絵とか描くのが趣味の
引きこもりで、えへへ」
少女「ええ、まじかあ、魔王の孫のくせに」
魔王「そっちだって、勇者の娘のくせに、ふふ」
少女「…ねえ、あのさ、行くと来ないんだったら、わたしの村にこない?」
魔王「え?」
魔王「あ、あの、やっぱりまずいよ。わたし魔族だし。村の人、驚いちゃうし」
少女「平気よ。あなた、ツノが生えてる以外は私と同い年くらいにしかみえないし、ちゃんと説明すれば。どうせ行くところないんでしょ?」
魔王「そ、そうだけど…、いいのかな」
少女「あ、みえてきたわ。あれが私の村よ」
……
少女の家
父親「まさか、魔族が人間の村に来るとは。それに魔王の孫というのは本当かい?」
魔王「(ひっ…、ほ、本でみたことある…、この人、マジモノのゆ、勇者だわ…)は、はは、はい
!け、けどあの、わたし、人間と喧嘩する気はなくてその…、全然、何の力もない引きこもりでしてその…」
少女「お父さん、この子は全然、悪い魔族じゃないわ。魔王城でもいじめられてひどい目に
あってたって。だから、いいでしょ。しばらくこの村にいても」
魔王「あ、いや、だ、だめだったらすぐ出ていきますのでっ」
父親「いや、だめじゃないさ。行く当てがないのだろう、しばらくこの村にいるといいよ」
魔王「え!?け、けど…あのわたし…、魔族で魔王でその」
父親「大丈夫。魔族だって、悪い魔族ばかりじゃないっていうのは、
君をみていたらよくわかる。一緒に暮らそう」
少女「ええ、なんかあなたは私と性格合いそうだしっ!しばらくと言わず、
ずっとここにいてよ、友達になりましょうよっ」
王「う、うう…、あ、ありがとう…ございます…、わたし、わたし…魔王城で厄介者扱いされて、いつも
いじめられてたから…、こんなにやさしくされて…うれしくて…うう…ぐす、ぐす」
少女「なによ、大げさねえ。これからよろしくね、魔王っ」
父親「そうと決まれば、さっそく彼女の部屋を準備しなきゃな」
魔王「あ、ありがとうございます…うう…」
……
こうして魔王は、魔王城を離れ、勇者が住む小さな村に住むようになった…
少女の部屋
魔王「すごいわ、こんなにたくさんの書籍をもってるだなんて。おおきな図書館みたい」
少女「ふふ、いったでしょ。本を読むのが私の趣味なのよ。どれでも貸してあげるっ」
魔王「ほんと?じゃ、この本を…」
少女「だ、だめよそれは!ぜ、絶対だめっ!まだ駄目よっ!」
魔王「ええ、どの本でも貸してくれるって…、あ、ひょっとしてそれって、あなたが書いてるっている小説…」
少女「あ、あーあー!そ、そうよっ、だから見せられないわっ恥ずかしいもんっ」
魔王「ええ、なんで?恥ずかしくなんてないわっ、みせてよっ」
少女「だめよっ!恥ずかしいし、まだ完成してないからっ!」
魔王「じゃあ、完成したらみせてね、約束だからっ、絶対だよ」
魔王は少女と性格も趣味もとても気が合い、一緒に暮らすうちに2人はますます仲良くなっていった。
魔王も村の野良作業や祭事を積極的に手伝い、早く村になじみように積極的にがんばった。
それからしばらく月日がながれ…、
魔王「いつも夕ご飯をごちそうになってごめんなさい」
少女「いいのよ。その代わり、家事や野良仕事を手伝ってもらってるし、ね、お父さん」
父親「ああ、ほんとうに助かってるよ」
少女「それじゃあまた明日、明日は野草を一緒に取りに行きましょ」
魔王「うんっ」
……
魔王の部屋
魔王「(はあ…、まさかこんなに長く人間の村にお世話になるだなんて…
しかも勇者の家…)」
魔王「(…魔王としての職務を放棄してきたのに若干の罪悪感がないわけじゃないけど…
わたし、争い嫌いだし…、向いてないし)」
魔王「(これでいいんだよね。そもそも、勇者と魔王の小競り合いなんか今時
もう古いし…これでいいんだよ)」
魔王「(というか、いっそもう、このまま人間として…)」
魔王「(ん…?あれ、…なんか…意識が…急に…)」ぐらっ…
………
………
「きろ…、起きろっ!」
武道家「起きろっ」ばしっ
魔王「痛っ……、え?」
武道家「ったく。なにのんきに寝てるんだか」
戦士「おwなにこの子、けっこー可愛いやん」
魔法使い「ふひひ、こりゃあいじめがいあるわな、ひひ」
魔王「え?」
わくわく
じゃら…
魔王「え…なにこれ、ここ、どこ?なんで私、拘束されて…そ、それにあなたたちは…え?」
父親「ここは村の地下室さ。それに彼らは僕の冒険仲間さ。あとは…この村でのうのうと暮らしてきた
君も見た顔だと思うけど」
ぞろぞろ…
村人A「……」
村人B「……」
村人C「……」
……
魔王「え…村の皆さん総出で…、なんですか、これ…一体どういう…」
父親「ずっと君を観察してたんだ」
魔王「え?」
父親「まさか、こんな村に魔王が単身で来るなんて信じられなかったし…、しかも
あの恐ろしい姿したジジイの後継者がこんなガキなんて考えれなかったから…」
父親「けど、君のそのツノとか瞳の色とか、魔力の質…とか、ずっと観察して…、ようやく確信したから、こうして
地下室に連れ込んだのさ、君が正真正銘、あのジジイの孫娘ってことがさあ!!」ばしっ
魔王「ひっ!そ…そんな…、わ、わたしのこと…、信頼してくれてたんじゃあ…」
父親「信頼っ!ははっ!何言ってんの?魔王倒すのが、魔族駆逐するのが、勇者一族の、俺の役目だよ?
お前のこと信頼なんかするわけねーじゃんっ!」
魔王「そ…んな…」
父親「いやあ、君の爺さんにはホントまいったよ。ありえないくらい強くて、何回も痛い目にあって…
いつもぼこぼこにされて…、こんなふうにさあっ!」げしっげしっ
魔王「痛っ、痛っ!や、やめてくださっ…ひいっ!」
父親「全然魔王を倒せないって!国のっ!王様にも失望されてあっ!ほんとどん底だったんだぜ、
おれもっ!俺の仲間たちもっ!お前の爺さんのせいでさあ!!」げしっげしっ
魔王「もう…やめ…」
父親「はは、何言ってんだよ。君は俺たちにいたぶられて氏ぬんだよ?
俺の仲間も君の爺さんにはさんざんな目にあわされて恨みあるし」
父親「後ろの村人たちも魔族に家族をころされて、みんな魔族を、
魔王を恨んでるんだ。ちゃんとその償いはしなきゃね?」
戦士「そーそーw」
武道家「ははっ怖い?怖いか?おいっ」
魔法使い「ふひっ、ええ顔しよるのう…♡」
村人たち「……」ぞろぞろ…
魔王「そ、んな…」
父親「けどほんと、俺に運がまわってきたなって感じだわっ!
あのジジイが勝手におっ氏んで、こんなクソガキが魔王になって、しかも、
のこのこと俺のとこまでくるんだもんっ!
父親「あー、けどよかったわ、俺の代で魔王倒せることができるみたいで
…あんな引きこもりのできそこないの娘に勇者を継がす必要がなくなってほんとよかったわ」
魔王「…え?」
父親「いやあ、魔王と仲良くなるなんて…、わが娘ながらほんとカスでアホだなって思ったわ」
父親「ま、王様に言われて、無理やり後継者にさせるために押し付けられた義理の娘だから仕方ないかな。
どんくさいやつでほんとイライラしてたけど、王様の命令で我慢して育ててきたけど」
あいつが勇者なんて到底無理だって、この数か月でよくわかったし、やっぱ勇者になる
のは正当な血を受け継いだ俺じゃないと…」
魔王「…りけせ」
魔王「取り消せ」
父親「あ?」
魔王「できそこないとか…カスとか…アホとか、…わたしの」
魔王「…、私の、大切な…、友達を…、悪く言うな…」
父親「………」
父親「うん、わかった。もういいわめっちゃムカつく、よっし、それじゃさっそくこのガキ、みんなでいたぶろうぜっ」
戦士「いよっ、待ってましたっ」
魔法使い「ふひひ、まずはわしからじゃろっ」
武道家「バカいえ、まずは俺からだろーがっ!」
父親「おいおい、そんなはしゃぐなよ、いくら、積年の恨みを果たせるからといって…ん?」
魔王「あ、あああ…おあああ…」
父親「え?なんだ、こいつ…なんか…急に…魔力があがって…え?」
武道家「え、え?なんか、これ、まずくね…さっきまで単なるガキだったくせに…え」
魔法使い「こ、この魔力…、このプレッシャー、お、覚えが…!ひ、ひいいいい!」
戦士「や、やべ、この力、あのジジイと同等か、それ以上…、逃げっ…ひっ!」
魔王「ああああああがあああ!!!」
……
……
魔王城
幹部A「…はは、あの魔王の娘が家出してもう1年近く。
先代の魔王様の娘ということで、しばらく待ってみたが。
もうさすがにいいだろう。次の代の魔王は俺に決定だな」
幹部B「なにわけわかんないこと言って玉座に座ろうとしてんのよ、
てか魔王はわたしでしょうが」
幹部C「これこれ、ふたりとも。しかし、はあ…。なかなか
いい顔、いい体した娘だったのに、残念…、ん?」
魔王「ただいま」
幹部A・B・C「え?」
魔王「…なに驚いてんの?わたしの玉座の前で何やってるの?」
幹部C「ふぉっふぉ…!魔王様っ!帰ってこられたんですね!?しかし、全身血だらけになって…
どうたんですかな?わし、とっても心配で…ふひひ」さわさわ
魔王「…私に気安く触るな」
幹部C「ふぇ…?ぎゃああああああ!!!」ぐしゃあああ!!
幹部C「」
幹部A・B「え…え?」
魔王「玉座の前からどいて。座れないでしょう」
幹部B「は、はああ!?一年もいなくなって今さら何よっ!てかこれまで何して
たのよ…!」
魔王「勇者一行を頃してきたの」
幹部A「え…?」
魔王「原型なくなるくらいの肉片にしてきたわ。住んでた村の人間も全員」
魔王「だから、あとは人間界に残ってる人間を頃すだけだから。全力で滅ぼすの。
はやく魔王軍全軍にそう伝えて」
幹部A「ああ!?あのさあ!いきなり何言ってんの!そんなこと急に
できるわけないでしょ!今夏季休暇なんだからさあ!えらそうに
ガキみたいなこといってないで…ぎゃあああああ!!!」
幹部A「いた、いだだだ…、顔…俺の顔があああ!」ミシミシ
魔王「顔、つぶされたくなかったらとっとと仕事しなさい」
魔王「魔王が、命令、してんのよ。はやく行け」
幹部A・B「ひ、ひいいい、はいいいっ!」
魔王「ったく…、まともな幹部はいないのかしらね」
幹部D「おかえりなさいませ、魔王様」
魔王「あなたは…、そういえばあなたは、いままで私に一度も突っかかってきたこと
なかったわね。ほかの幹部とちがって」
幹部D「そんな恐れ多い…。私は、長生きで…代々魔王様に仕えている身ですから。
あなた様が先代をきちんと受け継いで魔王としての役割を果たされる器であることは最初から
わかっていましたから」
魔王「そっか」
魔王「やっぱそういう運命だったのね、わたし」
幹部D「ええ、もちろんですとも。ああ、それと。こちらの水晶に写る映像をご覧ください」
幹部D「魔王様が見事、勇者一行を倒してくれましたが、人間もたやすくはいきません。
人間界にも新たな勇者が誕生しましたよ。彼女が、あなたの新しい好敵手となるでしょう」
魔王「え…」
水晶の映像
王様『魔王が、卑劣にも勇者の村に攻め入り、勇者一行のみならず、村人を皆頃しにしたことは
国民の皆様も記憶に新しいでしょう。そして、それを皮切りに全世界で魔王軍の侵攻が活発化して
いることも…』
王様『しかし案ずるな国民よっ!全世界の民よっ!魔王に倒された勇者を受け継ぐ
新たな勇者が必ずや、魔王軍を打ち滅ぼすであろうっ!入ってまいれっ!」
少女『………』
王様『彼女は、勇者の正当なる血を引いた娘!魔王に出し抜かれ、実の親である勇者や
家族同然に暮らした村人を殺され、その心は魔王打倒の精神に満ち溢れておるっ!』
王様『この不屈の精神で、近い将来、必ずや魔王軍勢を滅ぼすであろうっ!!!』
……
終わりか?
魔王「……あーあ」
幹部D「魔王様?」